第2章 『おそらくはそれさえも幸福な』
買い物を終え家に帰る道中、藍華は千代にその出来事を話す。
千代は考え込むようにしばらく黙って歩いていたが、やがて意を決した様に一つ深呼吸をすると藍華が捨て子だったということを話した。
話し終わって、珍しく藍華の反応を窺うような、少し困った感じで視線を藍華にやる千代。
「本当は、もう少し藍華が大きくなってから話すつもりだったのだけどね」
「でも私は千代さんが今話してくれて嬉しいな」
だが藍華は別に落ち込んでも、ショックを受けるでもなかった。
生まれたばかりの頃千代に拾われたという藍華は、千代のことを母のように慕っていたし、千代も自分の娘であるかのように愛情を注いでくれた為に、自身の出自と言うのはあまり重要なことではなかったのだ。
それでも、ずっと藍華に「千代さん」と呼ばせていた理由が分かってすっきりしていた。
藍華は千代を安心させるように笑い、また別の話を始める。
それを優しく聞いて相槌を打つ千代。
そうやって仲良く歩く二人の姿は、血は繋がっていなくともまさしく"親子"であった。