第1章 『最終選別』
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藍華が藤襲山に入ってから十日目、最終選別が終わって三日目。
藍華はまだ違和感すら感じていなかった。それどころか、もしかすると最終選別のことすら忘れかけていたかもしれなかった。
・・・
入って十五日目。終わって八日目。
この頃になり、漸く藍華はある疑問を覚えていた。
──ここ数日、何故か鬼が急減していると。
それは藍華自身が片っ端から狩り尽くしているだけとは知らず、今日も鬼を求めて山を駆ける。
・・・
二十五日目。
この時期にもなると、鬼はもう一体も出てこなかった。いや、もう既に一週間以上前から遭遇していない。
…当たり前だ、残っていた鬼を藍華が全て斬ったのだから。
そしてこの日漸く藍華は最終選別が始まってから、とっくに七日過ぎていることに気が付いたのだった。
うっかりしていた事に少し恥ずかしくなった藍華は、急いで最初に集まった場所へ向かおうとするが、ここで一つ問題が発生した。
──道順がさっぱりわからなかった。藍華は方向音痴だったのである。
・・・
それから数日彷徨い、今日も見つからなかったと藍華が寝床を探し始めた時。
ふと視界の端に鮮やかな藤が見えた気がした。
しかしそうやって藍華は今まで何度も見間違えていたので、余り期待はせずにそちらへと向かう。
けれど今度こそ、その先は──
藤の咲く場所が見えていた。