第1章 背伸び [煉獄杏寿郎]
「おはようございます。良い天気ですね」
「おはよう。うむ、良い動物園日和だな!」
相変わらずクソデカボイスだけど格好良いなーと、見惚れて居ると大きい鞄をひょいっと持ち上げられトランクへ積み込まれる。
早速車に乗り込み、宜しくお願いしますっと、煉獄に微笑み掛けると、トリの方を向いてじーっと煉獄はトリから目を離さない。「今日、ちょっとお化粧とか変えてみたんです。似合わないですか?」
と、へへへっと眉尻を下げて困った様に笑うトリ。
「ん?とても似合っているし、トリらしくて良いと思うぞ」
と、ぽんっと頭に手を乗せた。
ぷしゅーっと頭から蒸気が出る程顔が紅潮し、にやけてしまうトリ。
(先生からも嘘を付いている様な匂いもしないし、変えてよかったのかもしれない。でも、どこか悲しい匂い…?)
と、自分の判断が間違いではなかったことに安堵するが、すぐ消えてしまい確認しようがなかった。
そして、背中を押してくれたみんなに感謝をした。
動物園はとっても楽しくて、2人して子供の様にはしゃいだ。
お昼の時間になると、トリが恥ずかしそうに
これ、作って来たので一緒に食べませんか!と、お手製のお弁当を作ってきたという。
ピクニック気分で大きな木の木陰にシートを引いてお弁当を広げる。
煉獄が好きなさつまいも料理はもちろん、食べ切れるかな?と思うくらい張り切って作ってしまった。
余ったら煉獄さんの家に置いてーなんて考えていたが
うまい、うまい!わっしょーい!と、美味しいと全部平らげてくれた煉獄にふふっと微笑む。
一通り動物園を周り、お土産も買い、もう一度行きたい所は無いかと聞かれてじゃぁ、と、触れ合い体験が出来る所に行きたい!と、
煉獄の手を引き、ずんずんと歩きだすトリ。
そんなトリの姿を後ろから優しくみている煉獄。
そこへ向かう途中に、うえーんっと泣いている子供に遭遇した時も優しくなだめ男の子だから頑張ろうと慰め励まして自分の為に買ったぬいぐるみをプレゼントしたり、一緒にご両親を探したりトリは見繕っていない自然体の姿を煉獄に見せていた。