第1章 背伸び [煉獄杏寿郎]
指の動きを徐々に早め、喘ぐ感覚も短くなってくる。
「…ん、んっ…ぁっ…先生…ッ」
いつも行為最中に浮かんでいるのは煉獄の顔、声、身体、指、匂い。
びくびくっと軽く痙攣をして、深くため息をするトリ。
(本物の先生が目の前に居たらどうなっちゃうんだろ…こんなエッチな彼女、嫌いになっちゃうかな…)
こういう時、いつもかまぼこ隊とカナヲの言葉が出てくる。
「好きな人のタイプに合わせて見繕ってたら、トリが疲れちゃうよ、自分らしくいた方が相手の人も喜ぶと思うけどな」と、炭次郎。
「俺は綺麗目なお姉さん風なピヨチャンも好きだけど、そのままのピヨチャンの方が好きだよー!」と、善逸。
「デートって気張るトリは疲れてそう。そのままの自然なトリで良いんじゃねーか?」と、伊之助。
「急に大人になんてなれないよ。そのままのトリを見て貰ったらいいんじゃないかな?」と、カナヲ。
確かに、煉獄に釣り合う様にと洋服を買い直したり、お化粧を変えたり、背伸びし過ぎていたのかもしれないな。
卒業してから無理に頑張り過ぎたのかもしれない。ちゃんと煉獄の前で笑えていただろうか。
失敗しない様に、釣り合う様にと見繕ってばかりで私自身が楽しめて居なかったかもしれないなと、少し反省をした。
そんな事を考えていると睡魔に襲われて、トリは眠りについた。
お泊まりの日、当日。
洗面台の鏡を見て何度も確認するトリ。
煉獄との逢瀬の時はいつもこうなのだが、今日は自分らしく行こうと目標を決めていた。
服装もフェミニン系からガーリー寄りに戻してみたり、化粧も大人な感じからナチュラルメイクに戻してみた。
変じゃないかなーとうろうろしながらお泊りのための持ち物を確認する。
ピロンッとスマートフォンが鳴り、煉獄が来たのを伝える。
今、下に降ります。
と、返信をして、荷物を持って部屋を後にする。
コンコンっと、車の窓を叩いて煉獄が車から降りてくる。