第3章 眼鏡にスーツ[煉獄杏寿郎]
仕事帰りの煉獄は黒縁眼鏡にスーツにネクタイをしめている。
それに仕事終わりの煉獄の汗の匂い。
そんな完璧な格好をしている恋人に欲望の目を向けられてドキドキしない恋人が居るだろうか。
スーツのジャケットを脱いで、トリの近くに寄る。
その度、ベッドがギシっと沈み音を立ててその音にもドクンと心臓が波打つ。
シャルっとネクタイを解く仕草にドキっと、しながらそれを見つめていると、くるりと、後ろに腕を持って行き、するするっとトリの両手首がネクタイによって拘束される。
やだっと、消える様なか細い声でその行動を拒否すると、こら、と、耳元で制されてしまう。
「どうしてこんな事をしたんだ?」
耳元で子供をあやすかのように優しくトリに問いかける。
ゾクリとして、顔をそらす。
「…ごめんなさい…」
「それでは答えになっていないだろう?」
とんっと、肩を押し、ベッドに押し倒す。
両腕を後ろで固定されているせいで少し身体を捻る様に倒れされる。
振り返る様に煉獄を見つめ、話そうとするが、上手くか言葉なら出来ない。
「言わないと分からないだろう。トリには口が無いのか?」
ぐっと顎を掴まれ、煉獄の唇が重なる。
始めはついばむ様な、触れるだけ、それに身体を疼かせるが、答えるまでしてやらないと煉獄は笑っている。
むーっと膨れたトリだが、諦めたかのように眉尻を下げて上目遣いで煉獄を見る。
「だって、煉獄先生が大人な表情ばっかりして格好良すぎるから、困った顔とか照れた顔とか、他の煉獄先生の顔も見てもっと好きになりたかったんだもん…」
面を食らったかの様な表情をしてから、はははっと、声を上げて笑う煉獄。
「だって、私ばっかり精一杯で余裕が無い大人の煉獄先生がずるいんだもんっ」
「それは違うな」
えっ、聞こえなかったと言い終わる前にまた煉獄は額に唇を合わせた。
耳に、瞼に、頬に、鼻に、唇にと、触れるだけのキス。
大切に扱う様な優しい口付け。
その感覚に擽ったさと、疼きを感じてしまうトリ。
「…ん、先生ぇ…」
トリがんんっと、舌を出して深いキスを求めると、はしたないと、言われ舌をキツく吸われた。
今度はお互いの唾液を混ぜ合わせる様に、ちゅ、ぢゅぅっと、舌を絡めてその混ぜ合わさった唾液をトリの舌の上に乗せて、飲ませる。