第1章 背伸び [煉獄杏寿郎]
「勝手に不安になって…ごめんなさい。」
しゅんっと眉尻を下げている子犬の様なトリの頭を撫でながら
「俺も一緒だ。トリは悪くない。これから一緒に直して行こう。」
へにょっと目尻を下げて潤んだ目を煉獄に向けて微笑むトリ。
もう、泣くな。と、頭を撫でていた手を下ろし、指の腹で目尻を拭う。
わざとではないが、トリの耳に煉獄の指が触れた。
「んんっ…ぁっ…」
ぐっと、喉を逸らせるトリ。目も潤み、唇もリップでほんのりピンク色、泣いたり笑ったりしたせいで少し紅潮している頬。
煉獄の綺麗な顔が近づいてきたかと思うと、瞼に唇を落とす。
「唇には…してくれないんですか…?私はずっと杏寿郎さんに触れて欲しいと思っていました…」
小さな声で語尾は聞こえるか聞こえないかくらいに。耳まで真っ赤にして煉獄へ気持ちを伝える。
煉獄の我慢と欲情する匂いが一気にトリの鼻に入ってくる。
その匂いにトリは自身の深い所が熱くなるのを感じるり
額に筋を立てながらふぅーーーっと、大きなため息をつく煉獄。
「そんな顔して煽ってくれるな、トリ。俺がどれだけ我慢していたと思っている?」
びきっとでも音が鳴りそうなくらい、煉獄は笑顔だが、どこか怒ってる匂いもする気がする…。
ひえっと軽く悲鳴が上がるが、ふわっと急にトリの身体が浮いた。
そう、煉獄がお姫様抱っこをして寝室へどすどすと歩き始めたのだ。
ちょ、まっ、煉獄さんっと、止めても聞き入れてくれない。
無理矢理運ばれてきたのに、ベッドには大事な物を置くかの様に優しく下される。
ぎしっと軋むベッド、煉獄がトリの上に跨る。
トリと、甘く優しく煉獄が名前を呼ぶ。
その低い声で名前を呼ばれるだけで体温が上がる。
「怖い、か?」
その言葉の意味を理解して、ふるふると、首を横に振るトリ。
「怖かったら、言ってくれ。トリの嫌な事はしたくない。」
と、トリの首筋に顔を埋め、ぎゅうっと抱き締める。
ふふっと、トリは笑い、煉獄の髪の毛を撫でる。
「杏寿郎さんに身体を求められて、私、嬉しいんです。子供っぽい、生徒感が抜けてなくて魅力が無いんじゃないかって不安だったから。嬉しいです。」