第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
3章のあらすじは、こうだ。
アズールと取引きをして、期末テスト対策である虎の巻を手に入れたエースとデュース、そしてグリムは、契約の条件を達成できず、アズールの下僕と化してしまう。
それを救うために、ユウとジャックが奮闘する……というのがだいたいの内容。
まあ、なんというか、お疲れ様としか言いようがない。
テストで楽をしようとするから、痛い目を見るのだ。
同情もせず、そんなふうに考えていたからだろうか。
翌日、オンボロ寮に住む自分にまで災難が降りかかってきたのは、知らんぷりをした罰なのかもしれない。
「この寮を没取させていただきます。」
穏やかに、けれど冷酷にそう告げたのは、ヒカルが愛してやまない推しキャラ――ジェイドであった。
内容というよりも、ユウがジェイドとフロイドを伴ってオンボロ寮に帰宅した方が驚きである。
まるで、憧れていたアイドルが家庭訪問してきた気分で、浮足立つのを止められない。
ストーリーを知っているヒカルは、このあとに待ち受ける展開を知っているのに。
「お約束を果たしていただくまで、この寮は一時的にアズールのものです。したがって、皆さんには直ちに退去していただかなくてはなりません。」
「ふなぁ!?」
「た、退去!? そんなの困ります、ここには自分たちの荷物もあるし……!」
「身支度を整えるくらいの時間はあげるよぉ。でも、早くしてね?」
契約書にサインをしてしまった手前、ユウは彼らの横暴な指示に従わねばならない。
顔色を悪くしながら、それでも勉強道具や運動着を集め始めた。
「ねえ、なにやってんの? はやくあんたも準備してよ。」
「え、わたしも?」
悪い笑顔でユウたちを眺めていたジェイドをさらに眺めていたヒカルは、フロイドに声を掛けられて首を傾げた。
「当然じゃん、オレらの話聞いてたぁ? お前らはぁ、全員ここから消えなきゃいけないんだよ~。」
話は聞いていなかった。
ジェイドを眺めるのに忙しかったから。
でも、話の内容は聞かずとも知っている。
知っている上で、言わせてほしい。
「それ、わたしも出て行かなくちゃいけないの?」