第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
ある日、その出来事は起きた。
いつものように仕事をして、いつものようにオンボロ寮に帰ってきただけ。
ヒカルの日常となんら変わらないように見えて、確実になにかが変わっていた。
ピンポイントで言うならば、グリムの頭にイソギンチャクが生えていたこととか。
「グ、グリム……ッ、その頭は……!」
「ふなぁ~~、アズールのやつに騙されたんだゾ。」
悲しげに鳴くグリムが可愛い。
じゃなくて、これはアレだ、例のやつが始まった。
「も、もしかして、テストでズルした?」
「ヒカル、なんで知ってるの? そうなの、グリムったらオクタヴィネルの寮長と取引きしてテストで良い点を取ったんだよ。それに、エースとデュースも!」
ええ、ええ、存じておりますよ。
だってそれ、ヒカルがトリップ前に何度もプレイしたストーリーだから。
「でもアイツ、オレ様を騙したんだゾ! テストで50位以内に入らなくちゃいけないとか条件出しておいて、すんげーいっぱいのヤツと取引きしてたんだゾ!」
ええ、ええ、それも存じておりますよ。
だってそれ、何度もプレイしたストーリー……。
「元はといえば、グリムがテストでズルしたせいでしょ!」
「んな~~、真面目に勉強なんてしてられないんだゾ! ユウ、助けてくれよぅ……。」
「もう、しょうがないな! 明日ジャックと一緒に探ってみるから……。」
情けなく泣くグリムの頭には、水中でもないのにうにょうにょ動くイソギンチャク。
耳をへたらせて嘆くグリムと、それを叱りながら宥めるユウ。
異様な光景を目にしてヒカルは思った。
ああ、3章が始まったのだ……と。