第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
それまでおとなしく髪を梳かされていたレオナが、思い出したように言った。
「そういえば、カメラはどうした。作戦は諦めてやったんだ、あの写真は消せよ。得るものもねぇのに無駄な処罰だけを食らうのは御免だ。」
「あ、カメラはここにあるけど、でも――」
「寄越せ。」
無駄に長い腕がヒカルからカメラを奪い、事件の発端となった写真を探す。
「これか……。ん、なんだ、この写真。ちっとも動かねぇ。」
現在主流となっている動く写真を想像していたレオナは、静止したまま変わらない写真に首を傾げる。
「あ、実はね、そのカメラ……。」
今さら隠し立てすることに意味はなく、ゴーストカメラの性能について説明をした。
「親密度が上がらねぇと動かない? なんだそりゃ。ってことは、俺らは証拠にもならねぇ写真にビビって計画を潰されたってことか。」
「ん、まあ……。」
「ハ……ッ、すっかり騙されたぜ。とんだ悪女じゃねぇか。」
人聞きが悪い。
勝手に勘違いしたのはそっちの方なのに。
「撮影者と被写体の親密度、か。ふん……、どいつもこいつも飛び出してこねぇじゃねぇか。お前、意外と仲いい男がいないんだな。」
「そんなことないよ! エースとデュースなら、撮ればたぶん……。」
なんなら今からでも撮影してこようかとカメラに手を伸ばせば、ひょいっと届かない高さまで遠ざけられてしまう。
「あ、なにするの! カメラ、返してよ。」
「お前、他の男に尻尾を振るつもりか?」
「そういう意味じゃないでしょ。ただ写真を撮るだけで……。」
というか、ヒカルにはレオナと違って尻尾も耳も生えていない。
それを指摘する勇気はないけれど。
「お前が好きなのは誰だ? ほら、言ってみろ。」
「レオナです! レオナが好きです!」
ヒカルの推し――改め恋人は顔がいい、声がいい、性格は悪い。
だけど、「好き」の一言だけでグルルと喉を鳴らす様子は、とてつもなく可愛い。
それを指摘する根性はないけれど。