第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
「……で、結局マジフト大会はどうしたの?」
ベッドで“ひと悶着”あったのち、ヒカルは乱れたレオナの髪をブラシで梳かした。
一度はやってみたかったことのひとつである。
ヒカルの膝に頭を預けて寛ぐレオナは、面倒くさそうに視線だけをこちらに向けた。
「あ? 俺らがマレウスの野郎に負けた話が聞きてぇってのか?」
トーナメント戦により、サバナクローは決勝戦まで駒を進めた。
決勝戦の相手は当然の如くディアソムニアで、これまた当然の如く惨敗したという。
実際には見たことはないが、マレウスのチートな力は凄まじいらしい。
「お前の邪魔さえ入らなけりゃ、俺たちの勝利は確実だったんだけどなァ?」
「それはどうだろ……いや、ごめんなさいね? で、なんでやめたんだっけ?」
艶やかな髪を丁寧に梳かしながら尋ねれば、今度は頭を揺らしてこちらを向いたレオナが機嫌悪そうに睨んでくる。
「……お前、わかっていてわざと聞いてんだろ。」
「さあ、どうでしょう。」
一度レオナからの好意に気がついてしまえば、ヒカルはそれほど鈍くはない。
ヒカルのせいとしきりに呟いていたラギーの発言から鑑みるに、レオナの気が変わったのだ。
意味がない、格好悪い、と喚いたヒカルの言葉によって。
それってけっこう、すごいことじゃないか?
「調子に乗んなよ? 俺はただ、当日に備えて待ちかまえてるハーツラビュルの連中の鼻を明かしてやりたかっただけだ。どんな作戦だったのかは知らねぇが、無駄になってざまァねぇな。」
「はいはい、そうだね。……というか、よくラギーが納得したね?」
マジフト大会に一番命を懸けていたのはラギーだ。
レオナが作戦をやめると言ったところで、簡単に納得するとは思えない。
「あいつには、卒業後まともな就職先が見つかんなかったら、いい働き先を紹介してやると言ったまでだ。」
「あ、さっき言ってた約束ってそういうこと。ん、でも……。」
いいのか、ラギー。
それはたぶん、“キングスカラー”という名の一流企業からのオファーで、仕事内容は大きな子供のお世話だぞ。