第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
レオナに触られるだけで、頭の芯が痺れてぼうっとする。
あれほど一晩の相手をするのは嫌だと思っていたのに、なにもかもがどうでもよくなってしまうのだから、俗に言う“流される”という現象なのだろう。
こんなのはダメだ、と理性と戦うヒカルの努力を無視して、それこそなにもかもを吹き飛ばすほどの威力を持った爆弾をレオナが投下する。
「この俺が、くだらねぇ仕返しなんかで女を抱くわきゃねぇだろ。」
「……え?」
痺れ始めた頭では、爆弾級のセリフを噛み砕くにも苦労する。
意味を理解する前に、レオナの舌が昨夜の口づけの痕を這った。
「遊びのつもりで抱いた女に、わざわざマーキングなんかしねぇよ。」
「……それ、は。」
怖い。
レオナの言葉を都合よく解釈してしまいそうな自分が怖い。
なにをどう答えていいか迷っているうちに、エメラルドグリーンの瞳がヒカルを射抜いた。
「お前は俺のもの。他の男なんかにくれてやらねぇ、俺の飢えを、乾きを満たす、俺だけの女……。」
俺こそが飢え、俺こそが乾き、お前から明日を奪うもの。
不意にレオナの詠唱を思い出し、涙が零れた。
なぜ泣いたのかは、わからない。
ただ、レオナに認められた気がして、受け入れてもらった気がして、求められた気がして、嬉しかった。
「……わたしに、明日をくれるの?」
詠唱に倣ってそう尋ねたのは、一番正しい問いだと思ったから。
好きとか、愛しているとか、そんなありふれた言葉じゃなくて、レオナの苦悩と強さが混じったユニーク魔法こそ、彼の心の中心にあるもの。
明日を、未来をくれると言うのなら、さながらそれはプロポーズのようではないか。
どんな愛にも勝るとも劣らない言葉を、レオナはくれた。
「ああ、お前に明日をやるよ。だから観念して、……平伏しろ。」
誰にも伝わらない、ヒカルにしか伝わらない、最上の愛の言葉を。