第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
レオナに連れてこられた先は、三日前と同じくサバナクローの寮。
しかし三日前と違って、連れてこられた部屋は談話室ではなくレオナの私室。
ぽいっとベッドの上に転がされて、開口一番問われる。
「なんで逃げた。」
「え、いや……。」
もともとヒカルは、不当な理由で拘束されていただけであって、隙さえ見つければ逃げ出してもいい立場だ。
それを「なぜ?」と問われても答えに困る。
「ヤるだけヤッてサヨナラかよ。世間じゃそういうの、ヤリ逃げって言うらしいな。」
「ヤリ……ッ!?」
王子様のくせに、どこでそんな俗語を覚えてきたのだ。
レオナに礼節や育ちの良さを求めるのは間違っているけれど。
絶句しているヒカルを無視して、自らもベッドに上がったレオナがヒカルの首筋に顔を寄せて鼻をひくつかせる。
「……男の匂いがする。」
「お、男……?」
なんのことだと思ったけれど、ヒカルは先ほどまで生徒の写真を撮っており、中にはヒカルと一緒に写真を撮りたがる生徒もいた。
肩を抱いたり腕を組んだりするくらいの接触は許していたので、微量な匂いが移ったかもしれない。
「それがどうしたの?」
匂いくらい移ったところで、生活に支障はない。
事もなげに問い返したら、レオナの機嫌が急激に下がる。
「どうした、だと? ふざけんなよ、お前。てめぇのものに匂いをつけられて平気な雄がどこにいる。」
「てめぇのもんって……びゃあッ!」
よくわからない言葉の意味を追求しようとしたところで、首筋にぬるりと濡れた感触が走って奇声を上げた。
「なんだその声は。もう少し、イイ声で啼けよ。昨日みたいにな……。」
低く色っぽい声が耳に吹き込まれた。
形の良い唇が弧を描き、ぺろりと舌なめずりをしているのを見て、首筋に触れたものの正体を知る。
「やだ、もう……、そういう仕返しの仕方はやめて……!」
「……仕返しだと?」
ラギーが言うには、ヒカルのせいで計画が潰れたらしい。
だとすればレオナの怒りはもっともだが、仕返しをするならば、もっと別な方法にしてほしい。
じゃないと、勘違いをしてしまいそうだから。