第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
混乱するヒカルの腕を、ラギーがしっかり掴んだ。
「ん?」
何事かと思って彼の顔を見ると、にっこり微笑まれる。
レオナとは違う種類のイケメンである。
しかし、なぜだろう。
ラギーの笑みには少しもドキドキせず、それどころか恐怖すら感じるのは。
まるで、「逃がさねぇぞ、この野郎」と脅されているようで。
「あ、あの、ラギーくん…――」
「レオナさーーん!! ヒカルくん確保したッスよーー!!!」
「はあ!?」
いきなり大声でレオナを呼ばれ、ヒカルの心臓は今度こそ口から飛び出た。
「ちょ、なに呼んでるの! 離して、こら、離せ、離せラギィィー!!」
「離さないッスよ~! ヒカルくんには責任取ってもらうッスからね。ヒカルくんのせいで、オレたちマレウスに勝てなかったんスから!」
「……え?」
全力で逃げようともがいていたところで、寝耳に水な話を聞いた。
ヒカルのせいでマレウスに負けたとは、いったいどういう意味だろうか。
「それって、どういう――……わぁ!?」
わけを尋ねようとしたけれど、すぐ傍の大木からぴょんとなにかが降ってきて、ヒカルの質問は驚きの声へと変わった。
「……いたか。チッ、手間をかけさせやがって。」
「レ、レレ、レオナ、くん!」
なぜここにレオナまでもが登場するのだ。
レオナの身体はオーバーブロットにより疲弊しているはずで、こんなに元気に現れるなんておかしい。
そういえば、ラギーだって変だ。
彼はレオナのユニーク魔法の餌食になり、身体から水分を抜かれてダメージを受けたはず。
けれど、ラギーの腕は無事だし、当の本人もぴんぴんしている。
「え、これ……どういうこと? 作戦は……?」
狼狽えながらレオナとラギーを交互に見ると、少し恨みがましく、そして呆れた顔をしたラギーがボヤいた。
「ぜーんぶヒカルくんのせいッスよ。ヒカルくんがウチの寮長を誑かしたから、レオナさんにその気がなくなっちまったんで。」
「た、誑かし……!?」
なんて人聞きの悪いセリフ。
でも、ラギーは今、もっと聞き捨てならないセリフを口にした。
その気がなくなったとは、いったいどういう意味だろうか。