第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
夕焼け色に染まった空の下、ヒカルはマジフト大会の余韻に包まれた生徒たちの写真を撮って回った。
大会の内容については生徒たちと語り合わなかったけれど、小耳に挟んだ会話から、やはりマレウス率いるディアソムニア寮の圧勝だったらしい。
当然だ、元からそういうストーリーなのだから。
(って、いけない、いけない。もうストーリーには拘らないって決めたのに!)
つい癖で原作の物語を思い浮かべてしまい、気を紛らわせようとカメラ内の写真を見返した。
悔し涙を呑む者、晴れ晴れした笑顔を見せる者、ポーズを決める者、カメラの中には様々な生徒たちが映っていたが、その誰もが飛び出してはこない。
親密度が足りないのだ。
(ていうか、親密度ってけっこう曖昧だよね。いったいどのくらい仲良くなれば、カメラから飛び出してくるものなんだろ。)
ラギーのように雑談を交わす程度じゃダメ。
まさか、マブダチと呼べるレベルまで仲良くならなければいけないなら、少々ヒカルには難易度が高すぎる。
(やっぱりこのカメラ、ユウに任せた方がよさそうだなぁ……。)
そう考えながらカメラのストラップを持ちぶらぶらさせていると、後ろから大きな声で名前を呼ばれた。
「あーーーッ、ヒカルくん見ーっけ!!」
「!?」
驚いた。
心臓が口から飛び出そうなくらい。
だって、ヒカルの名前を呼んだ声は、やっぱり聞き覚えがある声だったから。
「やーっと見つけたッスよ! もう、今までどこに行ってたんスか!」
「ラ、ララ、ラララ、ラギーくん。」
「なに人の名前で歌ってるんスか。」
歌ってない、動揺しているのだ。
なぜここにラギーがいる。
「えっと、ラギーくん。怪我は大丈夫……? 保健室にいるはずじゃ……。」
「怪我? 保健室? なに言ってるんスか。保健室に行くような怪我なんて、どこにもしてないッスよ。……ああ、そういえば、監督生くんは運ばれてたッスね。」
「え? ん? あれぇ?」
原作は気にしないと宣言したところ申し訳ないが、ちょっとおかしい。
2章の最後は、ユウと一緒にレオナとラギーも保健室に運ばれて、めでたしめでたし……のはずだったのに。