第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
レオナたちの謀略の全容は、他寮の有力選手を潰しながら、当日の凱旋パレードでディアソムニア寮の選手……ひいてはマレウス・ドラコニアを出場停止に追い込むことである。
大会観戦に訪れた一般客たちを魔力増幅薬を飲んだラギーが愚者の行進で操り、一斉にマレウスたち目掛けて突っ込ませる。
観客相手に魔法を使うわけにもいかず、突進を受けたマレウスは怪我を負って大会を棄権。
どう控えめに見ても、悪事以外の何者でもない作戦。
「アズールくんから薬は貰ってきたんッスよね? せっかくの作戦も、間に合わなけりゃ全部がパァになっちまいますよ。」
「ああ、わかってる。」
ヒカルの行方は気になるけれど、今さら彼らが行動を起こしたところで大会はすぐに開かれる。
クロウリーの性格上、学園の不祥事をメディアに曝すような決断は下さないだろう。
後日なんらかの処罰が与えられたとしても、せいぜい謹慎室に入れられる程度。
最悪退学になったとしても、学園を去るのは首謀者のレオナだけのはず。
(こんな学校、今すぐ辞めたって構わねぇ。)
そう思って腰を上げかけた瞬間、ヒカルの一言が頭に響く。
『レオナがいなくなった学園なんて、砂糖が入ってないケーキと同じなんだからーー!!!』
大声で叫んだヒカルの主張を思い出し、学園を去ったあとの生活を考える。
目標も目的もなく、夕焼けの草原で怠惰な生活を送る。
今だって、それほど変わりはしない。
ただそこには、レオナを好きだと叫んで怒った、あの用務員がいない。
好きだ好きだと騒いで、かと思えばレオナが一番言われたくない言葉で侮辱して、身体まで許したくせに、なにも言わず去ってしまったヒカルがいない。