第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
「好きなの? レオナ先輩のこと。」
「え……?」
唐突に尋ねられ、ヒカルは瞬いた。
好きだ、好きに決まっている。
なんといっても最推しだ。
呼吸をしているだけで奇跡、同じ空気を吸える幸せ。
遠くで眺めているだけで満たされるほどの、大好きなレオナ。
でも、ユウが聞いているのは推しに対する愛じゃなくて。
「……好き。」
ぼたり、と涙が零れ落ちる。
「好き、レオナが、好き。」
一度言葉にしてしまったら、溢れる想いが止まらない。
何度も口にして、レオナ本人にも告げた“好き”の言葉。
あの感情に、一切の曇りはない。
だけど、この世界に来た当時から抱えてきた想いは、レオナと共に過ごすうちに、別の“好き”へと変化していった。
どうしてレオナにモヤモヤしてしまったのだろう。
どうしてレオナに辛辣な言葉を吐いてしまったのだろう。
どうして優しくされると泣きたくなるのだろう。
答えは少し考えればわかることで、ヒカルの中でレオナは“推し”ではなく“人”として認識されるようになったから。
ゲームの世界に生きるレオナ・キングスカラーではなく、生身で生き、本物の心を持ったレオナと接して、ヒカルは彼を好きになった。
キャラクターなんかじゃない、ひとりの男性に恋をした。
もう二度と、眺めるだけでいいとは言えないほどに、彼が好きだ。
「……わたし、レオナが好きなの。」
ぽたり、ぽたりと涙落ちた。
この世界にトリップしてから一度も流していない涙が。
涙を流し、ひとりの男性に恋をして、初めてヒカルはこの世界の人間になれた気がする。
プレイヤーではなく、ただのヒカルとして。
カメラを握りしめ、わんわん泣きじゃくるヒカルの肩を、ユウがそっと抱いてくれた。