第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
朝早く、ヒカルはオンボロ寮への道のりをのろのろと歩いていた。
身体の節々が痛み、腰も重い。
破られてしまった作業着は手直しを施さないと袖を通せないほどで、借りていた運動着をそのまま拝借した。
ヒカルがなぜサバナクロー寮の外にいるかといえば、単純に隙だらけだったから。
明け方前に目覚めたら、背中にはレオナが張りついていて心臓がまろび出るかと思ったが、眠りが深い獣がヒカルの起床に気づくはずもなく、そそくさと部屋を出ていった。
昨夜の行為のせいか、レオナの部屋の周囲には寮生が寄りつかず、早朝ともあって拍子抜けするくらい簡単に脱出できてしまった。
サバナクローの名前が泣く。
どうせもう、ヒカルに人質としての価値はない。
カメラがあろうと、ヒカルが人質だろうと、物語は勝手に進んでいく。
闇の鏡の力を借りずに自力で歩いたせいで、オンボロ寮にたどり着く頃にはもうくたくた。
顔を出した朝日の眩さに目を細めながら玄関の戸を開けると、ちょうど起きてきたユウと鉢合わせた。
「え、ヒカル! ヒカル、帰ってきたの!?」
「あ、うん、ただいま。」
「よかった、無事で! どこも怪我してない? 助けに行けなくてごめん!」
今にも泣き出しそうなユウを宥め、五体満足であると告げる。
レオナはヒカルに手荒な真似はしないだろうとリドルが推測し、ユウたちは彼の指示に従ったらしい。
手荒な真似はされなかった。
昨夜の行為でさえ、優しかったのだから。
「あの、ヒカル。例のゴーストカメラなんだけど……。」
「あ、リドルくんたちが持ってるんだっけ?」
「ううん、今は自分が持ってるよ。」
原作どおりユウたちはリドル発案の作戦を実行する決断をし、カメラには頼らない道を選んだ。
さしずめ、ヒカルとカメラは作戦を隠すための体のいい囮だったのだろう。