第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
思えば最初から、気になる存在だったのかもしれない。
寮長会議で初めて挨拶をした時、「生きててよかった、神様ありがとう」と呟いたのが印象的だった。
なにがそんなに嬉しいのか、用務員に就任したヒカルは終始頬を緩めていて、幸せそうに笑っていた。
生きているだけで幸せだなんて、レオナは一度も思ったことがない。
生まれてからずっと、兄王との差別に苦しんでいたから。
そんなふうに思えるヒカルの目には、レオナには理解できない景色が広がっているのだろう。
結合部を密着させ、最奥に到達した楔でぐるりと円を描くように押し回すと、ヒカルが悲鳴に似た声を上げた。
「あ、ああぁ!」
「可哀想になァ、ヒカル。獣の尾を踏んだせいで、ひでぇ目に遭って。……なあ、お前、まだ俺が好きか?」
そうだ、あの時だ。
レオナがヒカルに不可解な想いを抱くようになったのは、あの夜、ヒカルが大声で叫んだせい。
好きだ、好きだと大声で。
自分の見てくれが良いのは知っている。
夕焼けの草原にいた頃だって、女は掃いて捨てるほど寄ってきた。
けれどそれは、レオナの肩書き目当てだったり、外見が好みだったり、それだけだ。
閨で愛を囁かれたことは星の数あれど、ヒカルのように大声で喚きながら「好き!」と告げられたことは一度もない。
見返りを求められなかったことも。
「なあ、俺が好きか?」
「ふぁ……、んッ、やぁ……ッ」
激しく挿入をしすぎたせいで、酩酊状態になったヒカルは言葉が紡げない。
それが疎ましくて、無防備な耳に噛みついた。
「言えよ、早く。俺のことが、好きだと……!」
「んあぁッ、あ、好き、好き…ぃ……ッ」
「グルルル……ッ」
喉が鳴った。
唸り声とは違う、別の意味を持った音で。
なぜ喉を鳴らしたのかレオナにもよくわからず、けれども身体は正直で、さらに質量を増した熱源がヒカルの中で膨張した。