第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
固く閉ざした唇に、レオナの舌が這う。
昨夜のあれをキスと呼んでもいいならば、レオナとキスをしたのは二度目。
しかし、傷を治す目的の一度目とは異なり、二度目のキスは明らかに違う意味を持っていた。
引き結んだ唇の合間をレオナの舌が無理やりに抉じ開けて、胸ぐらを掴んでいない方の片手が頤を握ってこれまた無理やりに歯列を割らせた。
ぬるりと侵入してきたレオナの舌を噛むわけにもいかず、ヒカルは目を瞑ったまま暴れる舌の感触に耐える。
一方的に絡みついた舌がヒカルの舌を扱き上げ、溢れた唾液をじゅるりと啜る。
濃厚すぎる口づけにくらくらしながら、レオナの舌はネコ科特有のざらつきはないんだな、なんて見当違いな安心をした。
代わりに、時折ちくりと当たる犬歯が痛い。
がぶりと噛みつかれたら、虚弱な人間の肌などひとたまりもないだろう。
ずるりと舌が引き抜かれ、粘つく唾液がヒカルとレオナを銀の糸で繋ぐ。
「取り消せよ、草食動物。前にも言ったよな、俺たちサバナクロー寮生は行儀が悪い。食いつかれたくなけりゃ、さっきの言葉をさっさと取り消せ!」
爛々と光るレオナの瞳には、怒りとは別の感情が見え隠れしている。
その欲望の名前を、ヒカルは知っていた。
今ここでレオナに従えば、まだ間に合う。
でも……。
「いやだ、取り消さない! だって、本当に格好悪いんだもん!」
「いい度胸だ。俺がガキかどうか、その身体で確かめてみろ……!」
ぶつッとなにかが弾け飛ぶ音がして、胸のあたりが涼しくなった。
弾け飛んだもののひとつが頬に当たり、ころころと髪の上を転がる。
引きちぎられた胸もと。
弾けて転がったのは、ボタンだった。
胸ぐらを掴んでいた手が黒い作業着を解放し、代わりに白い肌へと滑っていった。