第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
ストーリーの中で、レオナが王になりたくないと思った描写はない。
だからこれは、完全なるヒカルの憶測。
けれど、レオナの表情を見たヒカルは、自分の予想が正しかったと確信した。
見たこともないくらい、レオナの表情が歪んだ。
こんな時ですら、初めての表情を見られたことを嬉しく思ってしまう。
「俺が王になりたくない、だと……?」
レオナ自身、考えたこともなかったのだろう。
自分の劣等感、不遇による不満は、王になることで解消されるものと信じてきたから。
「王になりたいなら、自慢の頭脳で、得意の謀で、お兄さんから王座を奪えばいい。」
「マジフト大会のお遊びと簒奪を一緒にすんじゃねぇ、できるわけねぇだろうが!」
「そんなの、嘘。すり寄ってくる臣下も、それを可能にする策も、いくらでも思いつくでしょ?」
血筋だけじゃ、レオナは王になれない。
でも、謀略と頭脳を駆使し、野心を解放させれば、血に塗れた王位を手にすることができる。
それをしないのは、レオナが真に王座を求めていないからだ。
兄王を蹴落とし、甥を追放して王座に君臨したグレート・セブンの百獣の王に、レオナはなれない。
「王様になりたいわけでもないのに、いつまでも不遇を嘆いて拗ねるレオナは、子供みたいだね?」
「てめぇ……ッ!」
胸ぐらをぐんと引かれ、ヒカルの背が軽く浮いた。
殴られるかもな、と心の中で覚悟をする。
女性に優しいレオナを激高させるくらい、ヒカルの発言は無神経で失礼なものだった。
痛みに耐えるため、目を瞑って歯を食いしばる。
「――……んッ!?」
唇に、なにかがぶつかった。
予想していたものは、脳天を揺さぶるような衝撃。
それはまさしく、脳を溶かすほどの威力を持った一撃だ。
甘く、激しく、怒りをぶつけるような熱い口づけ。