第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
イライラする。
この苛立ちがなんなのか、ヒカルにはわからない。
口を出すべきじゃない。
冷静な傍観者の自分がそう言うけれど、ヒカルにはもう、我慢ができなかった。
だから、ベッドに座るレオナに近寄り、言いたいことを言ってやる。
「じゃあ言うけど、卑怯な手を使って大会で優勝しても、それは本当に強いわけじゃないでしょう。真実を知らないままじゃ、スカウトした企業が迷惑するだけだよ。」
選手として、人間として本当に有能ならばいい。
でも、レオナが考えた策に乗り、与えられたレールを進むだけの寮生が有能とは限らない。
登用してからそれが発覚しても、企業や社会の迷惑となるだけ。
「知ったこっちゃねぇよ。騙されたやつが悪いんだろ。」
「まあね、面接で言う自己アピールなんて半分以上が嘘みたいなものだけど。でも、採用された側だって、同じだけの期待を向けられるんだから。」
「なんでもやります、ヤル気あります!」と口にしたら、「なんでもやれる、ヤル気がある」と思われる。
実際にできなかったり怠けたりしたら、「あの時こう言ったでしょ?」と失望されるのは当然の結果。
マジフト大会で優勝したら、それだけ有能な者だと思われる。
しかし、実際には有能は選手は一部だけで、あとはレオナのおこぼれにありついただけの一般人。
「有能だと思われて採用されたら、あとで苦労するのは寮生の方だよ。」
「それこそ知ったこっちゃねぇな。あとは本人の努力しだいだろ?」
「……努力だけじゃ、報われないんじゃなかったの?」
レオナの一番嫌いな言葉を、レオナの言葉を借りて口にすると、獰猛なライオンが牙を剥いた。
胸ぐらを掴まれ、ぐんと引っ張られてベッドに転がされる。
ふかふかなマットレスのおかげで、衝撃はあまりない。
しかし、ヒカルの上では胸ぐらを掴んだまま唸る獣が今にも食らいつきそうな顔をしていた。