第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
小さなヒカルの呟きを、レオナの耳は正確に拾った。
「……なんだと?」
ヒカルはサバナクローの人間ではなく、ただの部外者。
本来であれば気にするべきではない発言が、レオナの心に深く刺さった。
「今、なんつった? もう一度言ってみろよ。」
心がささくれ立ち、ついさっきまで抱いていた苛立ちとは別の種類の怒りが生まれる。
自分を好きだと言ったヒカル、ここにいてくれないと意味がないと言ったヒカル。
ヒカルだけは、自分を認めてくれていると信じていたのに。
ぎろりと強く睨んでも、ヒカルは臆さなかった。
レオナを恐れず、こうして見つめ返してくるのは、ラギーくらいかと思っていたが。
「意味、あるのかなって言ったの。」
「……前にも言ったよな? 意味ならある。俺は、マレウスの野郎が悔しがる顔を見たいんだよ。」
自分こそが強者だと、王だとふんぞり返っているマレウスに敗北の味を舐めさせ、勝利することがレオナの目的。
ついでに大会で優勝した寮生たちが華々しく世間にアピールできたなら、いいこと尽くし。
「哀れなもんだぜ。マジフト大会で惨敗すると、卒業後に企業様からお声が掛からないらしい。可哀想だろ? だから俺が助けてやってんだよ。」
「……。」
嘘ではない。
全部、本当のことだ。
けれど、ヒカルの目は語っている。
嘘つき、と語っている。
「なんだよ、その目は。言いたいことがあるなら、黙ってないで言ってみろよ。」
卑怯だ、狡い、性根が腐っている。
誰になんと言われても、気になんかしない。
真正面から挑むだけが正当な手段だとは限らない。
でも、ヒカルにそんな目で見られるのだけは、許せないと思った。
それがなぜなのかは、知らない。
だけど、ヒカルだけは自分を理解し、味方になってくれるとなんの根拠もなく信じていたのだ。