第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
一度気づいてしまった綻びは、ヒカルの中でしだいに大きくなっていく。
一昨日までは、レオナが息をしているだけでなんでも許せた。
でも今は、結局授業をサボって昼寝をしているレオナに呆れていた。
(王族って贅沢な暮らしをするけど、それも全部血税でまかなわれてるんだよね。)
今のレオナは、王族の義務を果たしているとは言えない。
本当は優秀なくせに意図的に留年しているなんて、もし身内にそんなふざけた男がいたらぶっ飛ばす。
いくら寮生活とはいえ、学費と生活費はタダじゃないのだ。
午後の授業終了の鐘が鳴った頃、レオナが目を覚ました。
「ん、くぁ~……ッ。そろそろ行くか……。」
「午後の授業、もう終わっちゃったみたいだけど?」
「あ? 授業なんか別にいいんだよ。生意気なオオカミを可愛がってやるだけだ。」
ジャックのことだ。
正義感が強いジャックは2章でユウたちの味方をし、共にレオナの策略を潰そうと奮闘する。
今頃はユウたちと明日の大会に向けた作戦会議をしているはずだ。
原作では何事もなく当日の朝を迎えているけれど、裏切り者のジャックをレオナたちが放っておくわけもなく、なにかしらの諍いが裏であったのだろう。
ヒカルが知っているストーリーについては、口出しをすべきではない。
傍観者でいるのなら、絶対に口を出してはいけないけれど。
「それ、楽しい?」
「……あ?」
「そんなことして、レオナくんは楽しいのかな……って。」
「ハッ、なんだ急に。……ああ、最高に楽しいぜ。格下だと思っているやつに寝首を掻かかれ、無様な醜態を曝すマレウスの顔を想像するだけでな。」
悪役さながらの笑みを湛えて肯定するレオナ。
(本当はそんなことをしても、なにも変わらないってわかっているくせに。)
実力と血統は違う。
ゲームでそう呟いた彼の独白を、ヒカルは忘れない。