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Change the world【ツイステ】

第2章 撮影ホステージ!【レオナ】




ラギーには焦るなと言っておきながら、ヒカルの目にはレオナこそが焦っているように映っていた。

決戦の日を明日に控え、人質を逃がしてはならないとヒカルは朝からレオナの部屋に閉じ込められている。
部屋の前にはレオナ自身が選んだ監視役がついていて、ヒカルの逃走を阻んでいた。

大脱走劇を繰り広げるほど、ヒカルには熱意がない。
こんなにがちがちに閉じ込めてくれなくても逃げやしないのに、それでも心配なのか、レオナは二度もヒカルの様子を見に来た。

ちなみに昨夜は例の“唇の手当て”のせいで一睡もできず、完全に寝不足だ。
レオナが授業に出ている間に仮眠を取ろうと目論んでいたはずが、ちょこちょこ顔を見せるせいで睡眠の妨げになっている。

だから、三度目に現れた時には、思わず深呼吸をしてしまった。
ため息ではない、深呼吸だ。

「……わざわざ来てやったのに、なんだその反応は。」

「いや、別に……。授業出なくていいのかなって。」

レオナはナイトレイブンカレッジの三年生だが、年齢は20歳。
すなわち、在籍五年の留年生である。

成績は優秀だけど、兄王への反抗なのか、それとも怠惰な性格が災いしてか、出席日数が足りていないのが原因だ。
ゲームの中では「そんなところも可愛い!」と思っていたが、成人を迎えたリアルな留年生はいろいろとキツイ。

ベッドにごろんと仰向けになったレオナは、狂い始めた計画への苛立ちを隠さない。

「ったく、あいつら、本当にお前を助ける素振りを見せねぇな。大事にされてないんじゃねぇのか?」

「まあ、一応、わたしの方が年上だから……。」

「なんだ、そりゃ。年食ってたら偉いのかよ。早く生まれただけで、いろいろと得な人生だなぁ、おい。」

「……。」

今のはたぶん、ヒカルではなくてレオナの兄に向けた発言だ。

わかっている。
レオナは幼い頃から兄と比べられ、理不尽な評価を受けてきたってこと。

わかっている、わかっているが……。

(なーんかちょっと、モヤモヤするなぁ……。)

それは、ヒカルが推しに対して初めて抱いた、負の感情だった。



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