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Change the world【ツイステ】

第2章 撮影ホステージ!【レオナ】




視界いっぱいに広がる、レオナの顔。
美しいエメラルドグリーンの瞳に魅入っていたら、温かくぬるついたなにかが唇をなぞった。

出血が止まったばかりの傷がピリッと痛んだのは一瞬で、固まった血と一緒に痛みも傷も消えていく。

一秒後、魔法だと理解する。

二秒後、触れたものはなにかと疑問に思う。

三秒後、離れていったレオナの舌に赤いものを見つける。


「……美味いな。」

長い舌を口の中へ仕舞ったレオナは、そんな感想を漏らした。

美味しいものなんて、なにもついていなかった。
クリームも米粒も、ソースもなにもついていない。

ただひとつ、ヒカルの血を除いて。

「頑張って治してやったんだ、これくらいのご褒美があってもいいだろ?」

レオナの唇が弧を描き、怪しげに嗤う。

十秒後、ヒカルの唇に触れたものの正体を知った。


「ああ、お前の仕事だが、する必要はない。あのクズ共にやらせることにした。」

仕事、と急に言われても、咄嗟になんの話かわからなかった。
ほんの少し前に、仕事をしなくちゃいけないからと腰を上げたはずなのに。

「お前、今日は俺の部屋にいろ。」

どっ、どっ、と遅れて心臓が動き出す。
ボタンをつけようとしていた手はそのままの体勢で固まって、思考もうまく働かない。

なにを言われても、脳を素通りして耳から抜け出てしまう。

なにを言われても、理解できないはずだった。

そう、なにを言われても。


「おとなしくしてろよ、ヒカル。」


「……ッ!」

その衝撃ときたら、まさしく雷に打たれたようだった。
たった一言、レオナに名前を呼ばれただけで。

どこか満足げに微笑んだレオナは、ご機嫌に尻尾を揺らして部屋から出ていく。

レオナの背中を見送って、バタンとドアが閉じた瞬間、ヒカルはベッドにひっくり返った。


一分後、ヒカルの心臓は破裂した。



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