第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
ヒカルの変化を目にしたレオナは、自身の胸に芽生えた不思議な感覚に首を傾げていた。
愚かな部下が崩せなかったヒカルの表情を容易く変えられたことに、気分がいいというか、そんなような気持ち。
「肩を見せるのはちょっと……。お気持ちだけで結構です。」
「ハッ、なにを照れているんだか。さっきの連中はお前が誘惑したんじゃなかったのか? それともそりゃ、服を剥いてほしいっていうアピールか?」
「ち、ちが……ッ」
「だったら早く肩を出せ。」
ヒカルはまだもごもごとなにかを言いたそうにしたけれど、結局は諦めて作業着のボタンを外す。
襟ぐりを大きく開け、やけっぱちの勢いで肩を露出させると、レオナの視線が釘付けになった。
日光に当たらない肩は腕よりもさらに白く、食欲に似た欲求がレオナの喉を唸らせた。
「グルルル……ッ」
「あ、グルルルって言った! やだ、生グルルル!」
「うるせぇ、黙れ。食うぞ。」
妙なテンションになるヒカルを黙らせ、小さな肩に手を滑らせた。
肉付きが悪そうだと思っていた肩は想像よりも柔らかく、またもやレオナを“食欲”が襲う。
余計な感情を無視して魔力を注ぎ、ヒカルを苦しめる根元たる痛みを取り除いた。
「あ……、急に楽になった。すごい……。」
たいしたことはないと言っていたくせに、やはり痛かったらしくヒカルの顔が和らいだ。
「ほかに痛ぇところはないか? ついでだ、全部治してやる。」
「便利だねぇ、魔法って。でも、本当にもう大丈夫、ありがとう。」
簡単に便利と言ってくれるが、治癒魔法はかなりの高度魔法で、使う側にも負担がかかる。
見返りも限度も求めずに治してやるなど普段のレオナならありえない大盤振る舞いだが、魔法の価値を知らないヒカルはあっさりと断ってきた。
(なんだ、つまんねぇな。せっかく親切に言ってやってんのに。)
ふと、ヒカルの唇に目を向けた。
浴場の床にぶつけて切った下唇が腫れ、痛々しく血がこびりついている。
美味しそうに熟れた唇に“食欲”が増し、せっせとボタンをつけるヒカルの後頭部を掴み、無防備な果実をべろりと舐めた。
舌に触れた果実の味は、蕩けるほどに、甘い。