第1章 全話共通プロローグ!
状況を整理したい。
その一、この学園とはどの学園か。
今さらになって辺りに視界を広げれば、ここはヒカルの家でもなければ、タクシー乗り場でもない。
たくさんの棺が浮かび、大きな鏡が鎮座する部屋には見覚えがある。
その二、あなたたちとは誰のことか。
ヒカルは現在ボロアパートでひとり暮らしであり、同居人はいない。
が、よくよく周囲を確認してみれば、ヒカルより少し年下の中性的な若者が不安そうに佇んでいた。
その三、というよりこれは夢でしょう?
クロウリーの手の感触はリアルに残っているけれど、夢でなければ会えない人物だ。
なぜなら、彼はゲームの中の、二次元に生きる人物なのだから。
「安心してください。元の世界には、この闇の鏡が帰してくれますから。」
「ちょっと待ったーー!」
さっさと邪魔者を追い払おうとするクロウリーに待ったをかけた。
夢だとしても、そろそろ限界だ。
説明を求めたい。
「あの、これって夢ですよね?」
「夢……? ああ、ナイトレイブンカレッジに入学できると思ったのが、それほど嬉しかったんですね。ええ、はい、お気持ちはわかります。でも、魔力のない人間を学園に置いておくわけにはいかないのです。」
違う、そうじゃない。
聞きたいのはそういうことじゃなくて。
混乱してきたヒカルとは対照的に、現実への帰還を希望したのは、後ろにいた若者。
「自分は、自分は早く帰りたいです! この変な夢から早く覚めたい!」
黒髪ショートボブの、細身な若者。
直感的に、物語の主人公である“監督生”だと思った。
そしてたぶん、監督生は女の子だ。
となると、ヒカルはいったいどのポジションにいるのだろう。