第1章 全話共通プロローグ!
こういうの、なんて言うんだっけ。
ああ、そうそう、トリップだ。
次元の壁を越えて異世界へ飛び込むことを、俗にトリップと言う。
少し前に流行ったティーンズノベルには、大変お世話になりました。
だとすれば、ヒカルはツイステッドワンダーランドの世界にトリップしてしまったのか。
と、非現実的な思考が頭をよぎったけれど、物語はヒカルのペースに合わせてくれない。
急かされるように監督生と共に鏡の前へ立ったら、帰還ルートへご招待。
ちなみにヒカルは現時点で配信されているストーリーをすべてクリアしているので、物語のあらすじを知っている。
監督生は、元の世界に帰れないのだ。
が、しかし、ヒカルはどうだろう。
ここでヒカルだけが元の世界に帰ってサヨナラなら、夢だとしてもトリップだとしても、少々展開がお粗末すぎる。
できればまだ、帰りたくない。
そんなヒカルの心が映し出されたのか、闇の鏡は気難しそうな表情を崩さぬまま、こう答えた。
「……ない。この者たちがあるべき場所は、この世界のどこにもない。無である。」
「そ、そんな……! ありえない!」
監督生とクロウリーが愕然とする横で、ヒカルは密かにガッツポーズをする。
(ぃやったーーーー!)
ありがとう、神様、闇の鏡様。
わたしはまだ、ツイステッドワンダーランドの世界で生きていたいです。