第1章 全話共通プロローグ!
「う、うーん……。」
気分がひどく悪かった。
ぐるぐる目が回るのは、きっと飲みすぎた酒のせいだろう。
なんて考えていたら、聞き覚えがある男性から声を掛けられた。
「あ、気がつきました?」
「え……?」
てっきり家のベッドで眠っていたとばかり思っていたヒカルは、いるはずのない第三者の声に驚き飛び起きた。
「気分はどうです? 君、ずっと気を失っていたんですよ?」
心配しているような口調で、しかし介抱をするでもなくヒカルを見下ろしていたのは、怪しげな風貌をした仮面の男。
黒い羽根がついたマントに、同じく羽がついたシルクハット。
どこからどう見てもコスプレ感が漂う装いの男は、コスプレイヤーか変態かのどちらかだろう。
しかし、ヒカルは知っている。
この男を知っている。
「困りましたねぇ。扉を介さず馬車に引っ掛かってくるなど、前代未聞――」
「ぎいやあぁぁぁッ!!」
男の言葉を遮って絶叫したら、仮面をつけていても隠せないほど、ぎょっと驚かれる。
「な、なんですか、急に叫んで……。」
「クロウリーだ! クロウリー! うそ、やだ、クロウリー!」
怪しげな仮面男の名前は、ディア・クロウリー。
ヒカルが大好きなキャラクター。
「ん? 君、私の名前を知っているんですか?」
「ええ! それはもう! いつもお世話になっております!」
「それは、どういう……?」
正確には、別にお世話になっていない。
むしろ、彼が持ってくる無理難題をヒカルは解決してあげているのだ。
「握手! 握手してください!」
「あ、はい。」
いきなりテンションMAXなヒカルに、クロウリーは若干引きつつも握手に応じてくれた。
できればサインも欲しいが、残念ながら紙とペンがない。
「ああ~、やだもう。どうしよう、嬉しくて死にそう。」
「ええ、ああ、よかったですね……。いや、しかし、残念なお知らせが。」
「え? なんですか?」
あのクロウリーに会えたのなら、残念なお知らせなどありはしない。
例え、一連の出来事が夢だとしても。
「あなたたちには、この学園から出ていってもらわねばなりません。」
「は……?」