第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
ヒカルが去った浴場で、レオナはしばらく呆然と突っ立っていた。
レオナが寮に戻ってきたのは、バルガスの飛行授業が面倒だったのと、人質の様子が気になったから。
野生の勘とでも言うべきか、レオナの選択は正しく、あと一歩遅ければ大変なことになっていただろう。
ヒカルの匂いを追って浴場に足を踏み入れた時、我が目を疑った。
押し倒されるか弱い女と、馬乗りになって押さえつける自分の部下。
レオナとラギーはヒカルを人質だと言ったけれど、彼女は巻き込まれただけの哀れな子羊。
戦時中の捕虜のような扱いを受けるべき人間じゃない。
刹那的に胸で広がった怒りは、愚かな“部下”の行動に向けたものか、それとも、ヒカルを押し倒す“男”たちに向けたものだったのか。
ヒカルの唇から流れた血を目にした時、その不可解な怒りは爆発的に膨張した。
許してはいけないと心の中の獣が牙を剥き、怒りのままに彼らを嬲った。
ユニーク魔法を発動し、怯える二人をカラカラのミイラにしたって構わない。
行き過ぎた躾はどう足掻いても教師たちの耳に入り、お咎めを食らうだろう。
計画していたマジフト大会での勝利も出場禁止という最悪のペナルティで得られなくなり、レオナは学園を追われるかもしれない。
だけど、それでもよかった。
この胸の怒りが鎮まるのであれば、退学なんて怖くない。
そう思っていたのに……。
「レオナがいなくなった学園なんて、砂糖が入ってないケーキと同じなんだからーー!!!」
まったく意味がわからない理由で激昂したヒカルは、このレオナに向かって平手打ちを食らわせた。
砂糖が入ってないケーキとはなんだ。
もう少しまともな例えはなかったのか。