第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
抵抗どころか拒絶の声も上げないヒカルをどう思ったのか、寮生二人は下卑な笑みを浮かべた。
「おい、こいつ嫌がらねぇぞ。まさか、こういうことを期待してたんじゃねぇだろうな。」
「そりゃ、とんだアバズレだぜ。発情期のメス犬だって、もうちょいマシな反応するぜ?」
汚い雑音を聞きたくなくて耳を塞ごうにも、ヒカルの両腕は寮生に背中で捻り上げられている。
肩がみしりと嫌な音を立て、あと少しでも力が加わったら折れてしまいそう。
せっかくおとなしくしているのだから、手荒な真似はやめてほしい。
「……ハッ、面白みのねぇ女だな。もういい、さっさとヤッちまおう。」
「そうだな、寮長たちが帰ってくる…まえ…に…――」
寮生のひとりの声が、不自然に途切れた。
「どうする? どっちが先にする? ここは平等に、じゃんけんで決めようぜ。」
「お、おい……ッ」
ヒカルの背中に跨って両手を拘束している生徒が愉しそうにはしゃぐ中、もうひとりの寮生が焦ったような声を出す。
「あ? なんだよ。早く順番決めようぜ。」
「そりゃ、なんの順番だ? ……言ってみろよ、おい。」
浴場に響く美声。
尖った耳の寮生の声でも、丸耳の寮生の声でもない。
ヒカルが一番大好きな、レオナの声。
「ひ……ッ、りょ、寮長!? な、なんでここに……!」
「質問に答えろよ。なんの順番を決めるって?」
「あ、いや、これは……!」
さすがは獣の瞬発力と言うべきか、全身の筋肉をバネにした寮生は弾けるようにヒカルの上から飛び退いた。
両腕を解放され、悲鳴を上げていた肩から力が抜ける。
「ち、違うんですよ、寮長。こいつが、この女が俺らを誘ってきたんですよ、なあ?」
「そ、そうです! 俺たちは誘いに乗ってやっただけで、全部そいつが悪いんです!」
よくあるチンピラ子分の言い訳だ。
常々思うけれど、彼らはその言い訳が通用するとでも思っているのだろうか。
当然レオナに通じるはずもなく、ドッと鈍く重い音が聞こえたと思ったら、寮生二人が床に転がった。
一拍したのち嘔吐したところを見ると、鳩尾に一発食らったらしい。