第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
背後から押さえつけられ、全身を強く打ちながら濡れた床にキスをする羽目になったヒカルが真っ先に感じたのは、恐怖ではなく怒りである。
(ちょ……、せっかくレオナに借りたお揃いの運動着なのに!)
撥水性がある丈夫な運動着もびしょ濡れな床には勝てず、どんどん水を吸収していく。
「暴れんなよ? お前、うちの寮を掃除してくれんだってなぁ。ちょうどいいぜ、ついでに俺たちの溜まったもんも綺麗にしてくれよ。」
「ハハッ、そりゃあいい!」
三流ドラマのチンピラ以下な発言をする監視役二人に、ヒカルは呆れ果てた。
こいつら、馬鹿なんじゃないだろうか。
低俗な故郷で女性がどのような立場なのかは知らないけれど、ここは歴史ある魔法学校だ。
校内で女性職員が乱暴されたとあれば、どんなに温情を与えてもらっても退学は免れない。
誰もが夢見るという有名学校での生活をほんの一時の欲求で無駄にするなど、馬鹿としか言いようがない。
(……そんな正論、口にするだけ無駄だよね。)
一時的に己を見失っている人間ならばともかく、彼らは根っからのゲス。
抵抗や反論などをすれば、暴力という方法で黙らせてくるに決まっている。
どんなに酷い目に遭ったとしても、好きでもない男に犯されたくはない……というヒロインらしい思考はヒカルになかった。
もちろん、犯されたいわけではない。
だけどやっぱり暴力を振るわれるのは怖いし、残念なことに操を立てる相手もいない。
ヒカルは処女じゃないので、多少乱暴にされたとしてもおとなしく我慢をすれば、ダメージは少なく済むだろう。
犯行後、クロウリーに訴えて彼らに復讐することだってできる。
でも、できればそれもしたくはない。
だって……。
(そんなことしたら、寮長のレオナもただでは済まないもんね。)
最悪、連帯責任でレオナも退学。
そんなバッドエンドだけは、なにがなんでも避けなければいけなかった。