第1章 全話共通プロローグ!
ツイステッドワンダーランド。
ディズニー映画に登場するヴィランズをモチーフにしたキャラクターたちが活躍する、スマホアプリゲーム。
ヒカルが絶賛のめり込んでいるゲームである。
黒い馬車とは、物語の主人公である“監督生”をツイステッドワンダーランドの世界に連れてきた乗り物で、この馬車に運ばれてきた闇の鏡に選ばれし優秀な者だけが、ナイトレイブンカレッジに入学できるのだ。
今ヒカルの前に停まっている馬車は、その黒い馬車にそっくりである。
「え、なに? なに? なにかのイベント? 宣伝?」
きょろきょろと周囲を見回してみても、撮影隊の姿などはない。
けれど、こんなクオリティ高い馬車に出会えるのは、一生に一度の奇跡だろう。
「ああ、すごい! 一緒に写真撮りたい!」
アルコールの力もあってテンションが上がったヒカルは、大胆にも馬車に近寄って記念撮影を試みた。
普段なら、許可も得ずにそんな迷惑行為はしない。
ただヒカルは、酔っ払っていたのだ。
その報いなのかどうなのか、ヒカルが身を寄せた馬車はいきなり動き出す。
「え、ちょ、待って……!」
なぜここで、荷台にしがみついてしまったのか。
急発進した馬車はぐんぐんスピードを上げていき、さすがのヒカルも恐怖を煽られる。
「待って、降ります! 停まって!」
そもそもおかしかったのは、馬車に御者がいないこと。
無人の馬車が街中にいるなどありえない。
ガラス張りの荷台には、おどろおどろしい棺がひとつ。
中で眠っているのは、永久の眠りについた死者か、それとも――。
「だ、誰か! 助けて~~!!」
悲痛に満ちたヒカルの声は、夜の闇に飲み込まれて消えた。