第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
感動するヒカルとは真逆に、面倒事を命じられたラギーは心底迷惑そうだ。
「なんスか、レオナさん。ずいぶんと優しいんスね。いくら女性だからといっても、そんな親切をするキャラでしたっけ?」
「妙な勘繰りをすんな。単にこいつが学園側の人間で、余計な負担を強いると後々面倒だと思っただけだ。」
どんな理由だって構わない。
面倒だと思われていても、親切の裏に策略が隠されていたとしても、レオナが味方をしてくれただけでヒカルは幸せだ。
(ああ、この場面をムービーに残したい! ……って、カメラは持ってないんだった。)
昨夜から、何度ポケットをまさぐってカメラを探したかわからない。
サバナクロー寮に寝泊まりし、レオナの傍にいられるなんて一生に一度の思い出だったのに。
(わたしがユウだったら、これから先もレオナと仲良くできるんだけどなぁ……。)
しかし、ヒカルは物語の主人公ではない。
あくまでもモブ中のモブであるヒカルは、今回の事件が終わればレオナとは寮長と用務員の関係に戻る。
以降に起きる事件やイベントで、レオナと関わり合いになったり、助力を願うような接点はきっとない。
ストーリーに関与せず、推しとは適度な距離を保っていたいと願ったのはヒカルの方だ。
けれど、どうしても心に残ってしまう寂しさは、これまで観賞対象だったレオナと話し、触れてしまったために生まれた贅沢。
「はーぁ、わかりましたよ。その代わり、ヒカルくんはウチの寮の掃除をするんスよ? あ、見張りはちゃんとつけるんで、逃げようとしても無駄ッスからね。」
「いいけど……。なにもしないで軟禁されててもヒマだし。」
サバナクロー寮は広いが、オンボロ寮に比べれば遥かに清潔だ。
マジフト大会は二日後。
今日と明日、ヒカルはのんびりサバナクローで掃除婦として働き、明後日にはまたいつもの生活が待っている。