第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
レオナに滾る愛がバレた。
バレたというより、自ら暴露した。
だって、もう、無理だったんだ。
呼吸が肌に触れるほどの近さで推しに迫られたら、どう足掻いても発狂する。
事実、発狂した。
そう、狂っているとしか思えない。
推しの愛すべきポイント、顔や声はもちろんとして、鍛え抜かれた体躯の筋肉美や艶々な髪の質感、美しいエメラルド色の瞳、果ては色っぽい手や爪の形までを褒め称えた。
推しであるレオナ自身に。
ドン引きするだろう。
もしヒカルだったら間違いなくドン引きする。
だから、レオナから「付き合いたいのか?」と尋ねられた時には、はっきりきっぱり否定した。
「いや、全然!」
推しへの愛といっても、その形は人それぞれだと思う。
見ているだけでいいと思う人もいれば、結婚したいと願う人もいる。
ヒカルも初めは、後者だった。
付き合いたいし、結婚したいし、同じ墓に入りたい、そう思っていた。
けれど、実際にツイステの世界にトリップしてわかったことは、推しが近くにいると心臓がもたない、ということ。
だって、あの顔で、あの声で、設定上にないオリジナルな言葉を紡いでくれるのだ。
例えば「好きだ」と囁かれた日には、感動を通り越して天国へまっしぐらに召されてしまう。
まさに、危険と隣り合わせ。
だからヒカルは、決して高望みはせず、推しは観賞物として愛でていたい。
無事に元の世界に戻って、ツイステの最終章をクリアするまでは死んでたまるか。
しかし、目下遂行すべき任務は、このサバナクロー寮から無事に生還する――ことではなく、無事にお風呂に入ることである。
お付き合いも結婚も望んでいなくても、推しの前で臭い女にだけはなりたくない。