第5章 御都合ライアー!【トレイ】
パーティーに参加するにしても、会場となるハーツラビュル寮へ行くのなら、開始時間直前か、もしくは少し遅れたくらいに行きたかった。
が、計画なんて思うようにいかないのがヒカルの人生である。
朝食を終えたあとにエースから鬼電よろしく着信が何度も入ってきて、「暇ならこっち手伝ってくんない?」なんて無茶ぶりをされた。
最初は断っていたものの、あまりにもしつこく電話が掛かってくるものだから、しだいに面倒になってしまい、ユウとグリムと共に闇の鏡をくぐってきた。
ばたばたと寮生が慌ただしく準備を進める中、ヒカルは思った。
(あれ、これ、わたしたちが手伝えることある……?)
庭園に咲き誇る薔薇へ向けて色変え魔法が飛び交い、真っ白な皿と銀のカラトリーが宙を浮かぶ。
魔法士ならではの準備方法に、ユウと揃って立ち尽くす。
魔法が使えないヒカルたちにできることは、たぶんほとんどない。
テーブルのセッティングや飾り付けなど、魔法を使えなくても手伝えることはそれなりにあるだろうが、女王の法律も知らないヒカルたちがいちいち説明を求めて指示を受ける方が時間の無駄だ。
ユウ二人、どうしようかと視線を合わせていたら、ヒカルたちに気づいたリドルがこちらへやってきた。
「ヒカルにユウ? それにグリムも。どうしたんだい、こんなに早くに。パーティーが始まるのはまだ先だよ?」
「ああ、えーっと、うーん……。」
説明を求めるリドルに、どう言ったらいいのかを悩む。
下手に説明をすれば、楽しいパーティーの前にエースの首が飛ぶかもしれない。