第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
よくよく考えてみたら、ヒカルはなんて危険な真似をしているのだろう。
このサバナクロー寮には血気盛んな連中が多い。
男子校ゆえに女遊びもできず、溜まるものは溜まるはずだ。
飢えた猛獣の根城をうろうろするなど、食ってくれと言っているようなもの。
第一ヒカルは、ラギーの部屋を知らないはずだ。
(俺の寮で面倒事を起こされちゃァ困る。ただ、それだけだ。)
言い訳じみた理由を考えながらヒカルの匂いを追うと、彼女はすぐに見つかった。
夜間の寮は外出禁止のために灯りが極端に少なく、ヒカルの足取りは覚束ない。
獣人であるレオナは夜目が優れていて、ヒカルの姿をはっきり捉えることができる。
獲物を追い詰める習性が勝手に働き、無意識に足音を殺した。
ヒカルに背後に忍び寄り、間近に迫って声を掛ける。
「おい、勝手に――」
「びゃあッ!」
驚かせたつもりはなかったけれど、ウサギのように飛び上がったヒカルが悲鳴を上げたので、慌ててその口を手で塞いだ。
「大声を出すな……ッ、何時だと思ってやがる。」
「むぐ、んん!?」
首だけで背後を振り返ったヒカルの、草食獣らしい黒目がちな瞳がこれでもかというほど大きく開いてレオナを見つめる。
「手を離してやるが……いいか、騒ぐんじゃねぇぞ?」
念押しをしてから口を解放してやったら、弾けたようにレオナから距離を取ったヒカルは、傍らの支柱に身を寄せてささっと隠れる。
「……おい。」
「あ、違うの、違うの! ちょっと近寄らないでほしくて……!」
「はあ?」
ふざけるな、この女。
ご親切に追いかけてやったというのに、近寄るなとはずいぶんな挨拶だ。
発言に苛ついたから、嫌がらせのつもりでさらに近づいてやったら、ヒカルはあたふたと顔色を悪くする。
「ま、待って、ダメ! それ以上は……!」
「それ以上は、なんだって?」
意地悪くさらに距離を詰めたら、ヒカルがとうとう爆発した。
「だってわたし、お風呂入ってないから!!」
「……は?」