• テキストサイズ

Change the world【ツイステ】

第5章 御都合ライアー!【トレイ】




「ヒカル……。」

ぶるりと痙攣する彼女を抱きしめ、キスをする。
トレイの心を占めるのは、ついに一線を越えた喜びと、本当にこれでよかったのかという不安。

「……起きる。」

ずっと抱きしめていたかったけれど、いつまでもこうしているわけにもいかず、名残惜しさを覚えながらも腕を解いた。

己が吐き出したモノは水魔法で生み出した膜に包まれており、身を起こしたヒカルの脇でこっそり処理する。

数秒前には腕の中で可愛く啼いていたヒカルは、今や黙々と衣服を身につけていた。
身支度を調えるその背が、どことなく拒絶を語っている。

(これで、よかったんだよな……?)

別れると言われたものの、ヒカルが口にした理由は解決できたはずだ。
けれども考えてみれば、ヒカルは一度も撤回をしてくれていない。

「なあ、ヒカル。」

同じく衣服を身につけながらヒカルの名前を呼ぶと、すっかり身嗜みを正した彼女が振り向く。

「俺たち、別れないよな?」

誤解はとけ、問題はなくなったはずだ。
不安の種はなくなったはずなのに、どうにも嫌な予感が消えない。

暗がりの中、立ち上がったヒカルはトレイを見つめ、そして言い放つ。

「ううん、別れるよ。」

「……ッ、なんでだよ!?」

別れるなんて認めない。
ようやく、ようやくヒカルを手に入れられたのに、そう易々と手放せるはずがないのだ。

「さっきも言ったはずだよ。理由は一番、あなたがわかっているはずだ、って。」

「ヒカル、曖昧な言い方をしないでくれ!」

ベッドの下に転がったマジカルペンを拾い上げ、照明の灯りををつける。
明るくなった部屋に目が眩んだのは一瞬で、すぐにヒカルの顔を凝視した。

だが、低下した視力でぼやけるヒカルの視線はトレイに向いておらず、じっとベッドを見入っている。

「……?」

つられるようにヒカルの視線を追ってベッドに目を向け、それから眉を寄せる。

真っ白なシーツの上に、ぽつりぽつりと残る痕跡。
庭園を彩る花と同じ、薔薇色の赤。



/ 426ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp