第5章 御都合ライアー!【トレイ】
ずっと捨てたかった処女を脱し、ヒカルはなぜ処女であり続けたのかを思い出していた。
高校生になったばかりの頃に付き合い始めた彼氏。
中学生から高校生に上がり、やることもできることも増えて有頂天だったあの頃。
親が不在の彼氏の家で事に及んだ時、地肌に触れた彼氏の手がどうしようもなく気持ち悪くなった。
ぞっと鳥肌が立った相手は、確かに好きだと思っていたのに。
でも、数年経った今ならわかる。
あの頃のヒカルは“高校生”という名の新世界に浮かれ、早く大人の仲間入りがしたかっただけなのだと。
気まずくなってあっさりと別れた彼氏のことはそれほど好きでもなく、別れを受け入れた彼氏も同様だったのだ。
ならばなぜ、彼氏でもないトレイの手に嫌悪感を抱かずにいられるのか。
「や、ぁん……ッ」
一定のリズムで律動する剛直がとある蜜壁を抉り、甲高い嬌声を上げた。
甘えるようなその声が恥ずかしくて再び手の甲を噛もうとするが、トレイに手首を掴んで阻まれた。
「ここ、か? ここ、気持ちいいのか?」
「ひぁ……ッ」
ぐりっと切っ先が身体の内側をつつき、堪らず悲鳴を漏らす。
無視できない愉悦と鈍痛が入り混じり、反応に困ったヒカルはいやいやと首を振る。
「よかった、ちゃんと感じてくれているんだな。」
「いい、から! わたしのことを、気にしないで……!」
気遣わないでほしい。
自分だけの快楽を優先し、身勝手に腰を振って終わらせてほしい。
恋人のような甘い囁きはいらない。
手酷く抱いて、最低な男だと思わせてほしい。
「ヒカル……。」
そんなふうに、名前を呼ばないでくれ。
「あ、ふ、あぁーッ」
同じポイントをしつこいほどに擦られて、気持ちよさから中のトレイを締めつける。
脚を抱えていた片手が結合部へと滑り降り、充血した花芽をこりこりと撫でた。
「あぁッ、いやぁ……ッ」
痛みによって少なからず遠のいていた快楽の波が怒濤の勢いで押し寄せてきて、ヒカルの瞳に涙が滲む。
ぱちゅんぱちゅんと飛沫を上げるほどに体液が溢れ、互いの吐息が乱れ、感度という感度が急速に高まり、胎内を満たす男根が質量を増す。
ほとんど同時に絶頂を迎え、そして……。
「ヒカル、好きだ……!」
ヒカルの初めての人は、最後まで嘘つきだった。