第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
まずレオナが気になったのは、ヒカルがあまりにもラギーに気やすかったこと。
レオナが知るヒカルは常にもじもじしていて、言いたいことも言えないような女だった。
物事をはっきり言えない女は、レオナの好みからは外れる。
てっきりヒカルは誰に対しても同じような態度を取っているのかと思っていたが。
(こいつ、ラギーにはずいぶん砕けて話すんだな。)
話の内容すべてが聞こえていたわけではないが、ヒカルとラギーが談話室で喋っていた声はレオナの耳まで届いていた。
明るく、時折笑いながら声を弾ませるヒカルは、レオナが知る女とはまるで別人。
単にラギーが接しやすい性格なだけかもしれないけれど、ヒカルの変わりようがレオナを苛立たせる。
まるで、お前じゃダメだと言われているようで。
(どこにいても、同じだな。)
不意に母国で兄である第一王子……現国王と比べられ、正当な評価も得られなかった頃を思い出した。
この女も、同じだ。
どいつもこいつも、上っ面でしか人を見られない。
だからだろうか。
追い出したいと思っていたはずのヒカルを、ラギーの傍にいたいと言い出したヒカルを邪魔したいと思ったのは。
「じゃ、やっぱりラギーくんの部屋で。」
「却下だ。」
半ば本気でラギーの部屋に行くつもりだったのか、ヒカルが大きな黒い瞳を見開いてレオナを凝視した。
「なら、どうするんスか?」
「……チッ、俺の部屋でいい。」
「りょうかーい。オレ、ヒカルくんの布団持ってくるッス。」
レオナが折れるとわかっていたのだろう、ラギーの行動は早い。
ああいう小賢しいところを気に入っているが、たまに無性に殴りたくなる。
部屋に取り残されたヒカルはフリーズしたまま微動だにせず、ライオンに睨まれた草食動物状態。
「悪かったなァ、邪魔をして。」
「え……?」
嫌味のひとつでも吐いてやらねば気が済まなくて、意地の悪い笑みを浮かべながらヒカルを見下ろす。
「せっかくラギーと一緒にいられるチャンスだったのにな?」
「……!」
ヒカルは意外にも顔に出やすい女で、驚きに染まったその顔は、「どうしてわかったの?」と言いたげだった。