• テキストサイズ

Change the world【ツイステ】

第5章 御都合ライアー!【トレイ】




ここまで言っても、トレイは嘘を認めてくれなかった。

ヒカルが認めてほしい嘘は、恋人関係を偽装していたことではない。
トレイがヒカルを好きだと言った嘘。

好きでもない女に愛を囁き続ける気持ちは、どんなものだったのだろう。

もう今さら、知りたくもないけれど。

リドルの件は、きっとトレイの中で解決したはずだ。
ヒカルがリドルを恋愛対象として好きではないと知れば、こんな嘘を続ける必要もないと察したに決まっている。

これ以上、なにも言わないで。
あなたの嘘は、許すから。

乙女心を弄ぶ残酷な嘘だったけれど、トレイを利用しようとしたのはヒカルも同じだ。

恋人ごっこは続けられない。
たぶん、友達にも戻れない。

とはいえ、ヒカルたちは最初から恋人でも友達でもなかったけれど。

生徒と用務員。
元ある場所に戻るだけ。

「待ってくれ、ヒカル。」

言わないで、なにも。

例え謝罪の言葉であっても、今のトレイからはなにひとつ聞きたくはない。

その代わり、ヒカルも謝らない。
嘘をついていたのはヒカルも同じで、記憶が戻ったことも隠し続けた。

要するに、ヒカルたちは二人とも嘘つきだ。
責める資格もありはしない。

「ヒカル、俺は――」

「エース!」

なにかを言おうとするトレイを遮り、都合良く見つけた青年の名を呼ぶ。
振り向いたエースは運動着姿で、駆け寄るヒカルを見て「おー」と手を上げかけ、トレイに気がつき目を丸くする。

「休日に運動着なんて珍しいね。どこ行ってたの?」

「え、あー……、部活。」

「そうなんだ、頑張ってるね。一緒に帰ろう!」

「は? いや、でも……。」

「帰ろう。」

部活後でベタつきが残るエースの腕を、ぐっと掴んだ。
すぐそこにトレイがいるのだ、エースがなにも思わぬはずがない。

けれどもエースは小さくトレイとヒカルを見比べたあと、黙ってヒカルの誘いに応じてくれた。

今日ほどエースに感謝した日はない。



/ 426ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp