第5章 御都合ライアー!【トレイ】
ラギーとの取引きを終えたヒカルはスキップ混じりに外廊下を直進していった。
一方ラギーはというと、そのままグラウンドに戻るつもりだったのだろう、くるりと振り返ってトレイの存在に気づいた。
『うぉ……っと。トレイくんじゃないッスか。驚いた、一瞬レオナさんかと思ってビビっちまった。』
『ラギー、今の写真……。』
『ん? ああ、見てたんスか? ヒカルくんも物好きッスね~。たまにああやって頼まれるんスよ。』
悪びれもせず、写真の売買を認めるラギー。
マジカメに夢中なケイトも時折本人に無断で写真を撮ったりするが、あれでも一応わきまえてはいる。
金銭が発生するなど言語道断だ。
『他人の写真で利益を得るのは、褒められた行為じゃないな。』
『そんなお堅いこと言わないでほしいッス。あれは労働に対しての正当な報酬。タダ働きなんて死んでもごめんッス。』
ここでもやはり悪びれないラギーに対し、先ほど生まれた苛立ちがさらに募った。
しかしその苛立ちは、リドルの写真を勝手に売られたことよりも、ヒカルの想いを利用したことに向いている。
『ラギー、反省しないようならクルーウェル先生にでも報告するか?』
『ちょ……、勘弁して! ただでさえ、レオナさんの目を盗むのに必死なんだから!』
サバナクローの寮長であり、同じマジフト部の一員であるレオナは、ああ見えて女性を敬うタイプだ。
片腕的存在であるラギーがヒカルに写真を売りつけていたと知れば、すぐさま鉄槌が下されるだろう。
『そうか。なら、レオナに報告をしよう。その方が、いろいろと安心だ。』
『なにがどう安心なんスか!』
少なくとも、教員であるクルーウェルに報告するよりかはヒカルの立場が悪くなる危険性が減る。
その点レオナなら、ラギーを罰してもヒカルに被害を与えない。
彼女にはあとで、自分がやんわりと注意すればいいだけの話だ。