第5章 御都合ライアー!【トレイ】
面倒事は、だいたいにして重なるもの。
新入生の統率を執ろうしたリドルは、間違った方向に走り、その結果、他の寮生の不満を煽って大惨事になった。
暴走したリドルはオーバーブロットし、なんでもない日のお茶会はめちゃくちゃ。
それを治めたのは、ヒカルと同じくして学園にやってきたユウ。
ユウの核心をつく発言にトレイも己の過ちを自覚し、リドルとハーツラビュルは良い方向に少しだけ変わり始めた。
そうなれば、きっかけとなったユウをリドルが可愛がるのは当然のこと。
しかし、そこについてくるのがヒカルである。
ヒカルとユウは同じオンボロ寮で寝食を共にしており、仲も良い。
律儀なリドルは、ユウを招待するお茶会やパーティーに必ずと言っていいほどヒカルも誘う。
それどころか、「彼女は真面目で良い子だね」なんて言い出す始末。
ヒカルが悪い女性だとは思っていないが、大切な幼馴染みが悪女の罠に嵌まっていくようで見ていられなかった。
ゆえにトレイは、それまで以上に彼女の動向に目を光らせた。
『ヒカル、パーティーを楽しめているか? さっきからあまり食べていないように見えるが……。』
せっかく招待をされても、ヒカルはユウやグリムと違って用意されたご馳走に舌鼓を打つでもなく、寮生と交流を深めるでもなく、浮ついた視線でリドルを眺めるばかり。
気遣うフリをして、非難をしたつもりだった。
けれどヒカルは、眉尻を下げて困ったように笑う。
『いやぁ、実はね、胸がいっぱいで食べ物がお腹に入らないの。まさか、パーティーの仲間に入れるとは思ってなかったから。』
『なぜ?』
『だってさ、もっと見ている側だと思ってたの。それがほら、みんな当たり前のように仲間に入れてくれるから。なんかこう……、夢じゃないんだなぁって。』
彼女の言い分は、いまいちよくわからなかった。
ただ、なんとなく、ヒカルが自分自身を蚊帳の外の人間だと言っているような気がして、無性に気に入らなかった。