第5章 御都合ライアー!【トレイ】
ヒカルが顔を押しつけたのは、トレイのこめかみ。
そんなところに顔を埋めたら邪魔だろうが、トレイは文句を言わず、ヒカルの鎖骨にカリッと歯を立てる。
「ん……。」
痛みを感じたはずが、喉から漏れ出たのは甘えるような声。
そんな恥ずかしい声を、トレイの耳もとで発してしまった。
嬌声なんて今に始まったことではないけれど、耳もとで囁くように聞かせるのとではわけが違う。
そう思ったのはヒカルだけではないようで、胸をまさぐっていたトレイの手がびくりと跳ねた。
(やだ、ほんと恥ずかしい……!)
慌てて距離を取ろうとトレイの肩に手を掛けたら、ヒカルの動きを阻止するように胸の先端を摘ままれた。
これまでみたいに偶然を装って触れるのではなく、大胆に触れてはぐりぐりと捏ねられる。
「あ、ダメ……ッ、やぁ……ッ」
途端に力が抜けて体勢を崩し、トレイの耳に唇を寄せては艶めかしい声を漏らした。
強く柔く、強弱をつけて頂を捏ねくり回され、下半身がじんと熱くなる。
突然変化したトレイの愛撫は、ヒカルから喘ぎ声を引き出そうとしているようだった。
「んぁ……、トレ……やめ……ッ」
息を荒げて制止を求めた時、ふとお尻に違和感を覚えた。
お尻の下に、硬くて熱いモノが当たる。
ヒカルが座っているのはトレイの膝であり、当たっているのは椅子でもテーブルでもなくトレイのナニカ。
目で見て確認はできないけれど、この状況で、この体勢で、股間に現れた“硬くて熱いモノ”はひとつしかない。
(た、勃ってる……!)
内心ひどく驚いたが、実際のところ驚くような現象ではない。
こんな行為をしておいて、反応しない男の方が稀であろう。
今までも過度なスキンシップはあったけれど、トレイの反応を直に感じたのはこれが初めてで、年上のくせにどうリアクションしたらいいのかわからず冷や汗を掻いた。