第5章 御都合ライアー!【トレイ】
翌朝、ヒカルはエースとデュースを伴って大食堂へと赴いた。
寮で朝食をとるリドルには何度も「キミも一緒に食べたらいい」と誘われたが、ユウが食堂で待っているからと断った。
別に約束をしていたわけではないけれど、食堂ではユウとグリムが四人分の席を確保して待っていた。
ちなみに、グリムは椅子に座らないのでノーカウント。
「ヒカル、おはよう。寮じゃなくて食堂で顔を合わせるのって、なんだか不思議だね。」
「おはよ、ユウ。留守にしちゃってごめんね? 大丈夫そう?」
オンボロ寮で生活していくにあたり、ヒカルとユウは手を取り合ってきた。
主に、掃除。
ヒカルたちの寮はなにせオンボロだから、少し手を抜くだけでたちまち埃だらけになってしまう。
グリムは真面目とは言い難いし、ユウひとりに管理を任せるのは心苦しい。
「うん、大丈夫だよ。トレイ先輩が気を利かせてくれて、ハーツラビュルの人を助っ人に呼んでくれたから。」
「ってか、その助っ人ってオレたちな! 知らない人みたいな言い方すんなよ。」
ヒカルの知らない間に、エースとデュースがオンボロ寮の助っ人に駆り出されていたらしい。
引っ越し作業を手伝って、なおかつオンボロ寮の掃除。
心なしか二人の顔がやつれているように思える。
「しょうがないだろ、エース。原因を作ったのは僕たちなんだ。しっかりケツを拭かないと、筋ってもんが通らない。」
「ハイハイ、元ヤンは黙っててくださーい。」
今回の事件は元をただせば二人に原因があるので、順当と言えば順当だ。
名前も知らないハーツラビュルの寮生が手伝いに来るより、ユウとしても気が楽だろう。