第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
ラギーの話をことごとくスルーしたヒカルの前で、憐れなハイエナがひらひら手を翳した。
「ヒカルくーん。聞いてるッスかー?」
「……ハッ、ごめん。全然聞いてなかった!」
「そこまではっきり言われると、逆に清々しいッスね。」
だって、しょうがないじゃないか。
推しが、推しで、推しなんだから!
「……で、なんだっけ?」
「いや、だからぁ……。」
「ラギー、待て。」
同じ要求を二度口にしようとしたラギーを止めたのは、ほかならぬレオナ。
気怠げに髪を掻き上げながらこちらを見やる仕草は色気がむんむんで、眺めるヒカルは爆死しそう。
「立ち話もなんだろ? 丁重にもてなしてやれ、サバナクロー寮でな。」
「あ、なるほど。よかったッスね、ヒカルくん。レオナさんが寮に招待してくれるらしいッスよ?」
レオナからの誘いであれば、一も二もなく頷きたい。
が、寮長からの招待はろくな目に遭わないとリドルの件で実体験済み。
「あ~、わたし、これから学食に行こうと思ってて。」
「メシか……。それならラギー、お前が作ってやれ。」
「オレがッスか?」
いらぬ仕事を振られたラギーが面食らうが、命じたレオナは当然だとばかりに鼻を鳴らした。
「誰のせいでこうなったか、覚えてんのか?」
「う……ッ。はいはい、わかりましたよ~。」
普通なら、素人同然な男子学生の料理など御免被りたいところ。
しかし、このラギーは見かけに反して料理が上手い。
チャラそうな顔をしながら実はおばあちゃんっ子で、料理のレパートリーが幅広い。
というか、トレイといいジャミルといい、ツイステには料理上手なキャラが多すぎる。
大きな誘惑に心の天秤がぐらぐら揺れるが、やはり面倒事の重みが勝り、両手を突き出しながら後退した。
「気持ちはありがたいけど、やっぱり学食にしようかな~……って、きゃあ!」
じわじわ逃亡作戦は失敗。
それどころか、逃亡の選択肢すら塵と化して消える。
理由はヒカルの足が大地を離れ、レオナの肩に担がれてしまったからだ。
「めんどくせぇ。このまま連れて行くぞ。」
「誰かに見られたら誘拐と思われそうな絵図らッスね。」
レオナの身長は185㎝。
とても逃げられない高さに担がれて、失神しそうだ。
高さというより、違う意味で心臓に悪い。