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Change the world【ツイステ】

第5章 御都合ライアー!【トレイ】




出窓から器用に侵入してきたトレイは、夜中に異性の部屋へ忍び込んだ不埒者とは思えないほど爽やかな笑みを浮かべた。

「悪い、待たせたな。」

別に待っていたわけじゃない。
一方的に結ばれた約束は拒否のしようがなくて、仕方がなかっただけだ。

しかし、それを口にするのは憚られる。
なにせ、記憶がなくてもヒカルたちは恋人同士なのだから。

「……どこから来たの? なんか、すごく危ないことしてなかった?」

「ああ、俺の部屋はひとつ上の階のぐるっと回った反対側にあるんだ。うちの寮は城みたいな造りだから、意外と足場が多いんだよ。その分、外壁の掃除が大変なんだけどな……。」

「え……、笑いごとじゃないでしょ。落ちたらどうするの?」

「そんなヘマはしない。それに、恋人と二人きりになるためには、多少の障害は付き物……だろ?」

そう言いながら、迫り寄ったトレイが両腕でヒカルを囲う。
腰の後ろで両手を組み合わせ、腕の檻の中に緩く閉じ込められた。

恋人ならば、不思議ではない距離感。
でも、ヒカルにとっては羞恥を生む距離感。

「……ッ、ていうか、こんな時間に部屋を抜け出したらマズイんじゃない? トレイくん、相部屋でしょ?」

「そこは魔法で、な?」

白い歯を覗かせながら、悪戯っぽく笑うトレイのユニーク魔法は“薔薇を塗ろう”。
カタカナ読みしてドゥードゥル・スートは、対象の要素を上書きできる魔法。

食べ物の味、人の認識、さらには魔法の効果まで上書きし、1章のラストではリドルの強力な魔法すらも無効化した。
一見無敵な魔法にも見えるが、効果が長続きしないという短所もある。

どうやらトレイは、ドゥードゥル・スートでルームメイトたちに暗示をかけたらしい。
トレイは部屋のベッドで健やかに眠っている……と。

「俺の部屋の連中は寝つきがいい。魔法が切れる頃には夢の中に旅立ってるだろうから、心配するな。」

なんだか、やり口が手馴れているように感じる。
まさか、日常的に部屋を抜け出して逢瀬を重ねていたのだろうか。

真面目なトレイのイメージとはかけ離れていて、知らない一面に少しだけ困惑した。



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