第5章 御都合ライアー!【トレイ】
リドルの誘いを受け、ユウとグリムを伴ってハーツラビュル寮へ移動すると、薔薇の庭園でケイトが待っていた。
「あ、ヒカルちゃんたちいらっしゃーい♪ 無事に大食堂から抜け出せたみたいでなにより。」
まるでヒカルたちがハーツラビュルへ来るのを予期していたような発言だが、事実、そのとおりだった。
「エースちゃんとデュースちゃんの二人が葬式に行くような顔して出て行ったから、こりゃひと騒動起こすなって考えたわけ。」
「それでなくても、キミは生徒たちから人気がある。空白の記憶を捏造しようと企む不届き者がいてもおかしくはない。」
リドルが食堂にやってきたのは単なる偶然かと思っていたけれど、実際はヒカルを救出するべく出動したらしい。
「今、トレイくんが朝ごはん作ってくれてるよん。トレイくんの料理は美味しいよ~。」
「ト、トレイくん……?」
ここはハーツラビュル寮。
副寮長であるトレイがいないわけがないし、計画的な救出に参加していないわけもない。
少し考えればわかることでも、昨日の一件からトレイの名前を聞くだけでドキッとする。
「ヒカルちゃん、仕事とパーティー以外でうちの寮に来ることないもんね。せっかくだから、楽しんでいってよ!」
「え、あ、そうなの?」
なにせ記憶を失っているから。
隣にいたユウに尋ねたら、ヒカルの一番身近にいる彼女はケイトの発言を肯定して頷いた。
「うん。自分はよく夜ごはんとか食べさせてもらったけど、ヒカルはいつも大食堂で食べてたよ。」
「そうなんだ……。」
トレイと付き合うくらいだから、てっきりハーツラビュルとの関わりが深いと思っていたのに、そうではなかったらしい。
だとすれば、いったいヒカルはどこでトレイと関わっていたのだろう。