第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
「待て、俺も行く。」
ヒカルの名前を聞いた途端、自然とそう言っていた。
部屋を出ていこうとしていたラギーは目を丸くし、それから訳知り顔で口に手をやる。
「シシシ、オレわかったッスよ。レオナさん、心配なんでしょう? レオナさんはホラ、女性に優しいから。」
「……馬鹿言ってんじゃねぇよ。単純にお前ひとりじゃ心配なだけだ。無能な部下を持つと苦労する。」
「はいはい、どうもすみませんっと。」
「おい、ラギー。お前、ドジ踏んだってことを忘れんなよ?」
他の寮生ならば怯える眼差しで睨んでも、この食えないハイエナは己のしでかした失態すらも忘れるような態度で飄々と隣を歩く。
食えない部下を引き連れて、レオナはサバナクロー寮から出る。
肝心のヒカルは、仕事柄あちらこちらに移動するため居所が掴めない。
道すがら、ほんの数ヶ月前ならぼうぼうに荒れていた雑草を目にすると、今ではすっかり綺麗に刈り取られていて、誰が整備したのかは明白だ。
寮内の庭やポーチは寮生の管轄だが、校内やどこの寮にも属していない敷地は学園が……つまりヒカルが管理しなければならない。
(女ひとりに任せるには、重すぎる仕事じゃねぇか?)
そう思って足を止めたら、ラギーが怪訝そうに首を傾げた。
「どうしたんッスか?」
「……いや、あいつはよく働くなと思っただけだ。」
「アイツって、ヒカルくんッスか? いや、まあ、確かに働き者って言っちゃあ働き者ッスけど……。」
微妙な返答を訝しめば、ラギーはなんともいえない笑みを浮かべながら独自の見解を語ろうとする。
「働き者には違いないッスけど、ヒカルくんは要領がいいんスよ。ここらの草刈りだって――って、あ! ヒカルくん見ーっけ!」
会話は途中で遮られ、ラギーが指さす方向には黒い作業服に身を包んだヒカルがいた。