第2章 撮影ホステージ!【レオナ】
ヒカルを初めて見かけたのは、あの騒がしい入学式。
なんでも、馬車に引っ掛かって学園にやってきた間抜けな人間がいたらしい。
通常、この学園の生徒は棺を模したゲートから召喚される手筈になっており、ゲートをくぐらず馬車に引っ掛かってやってきたなど、前代未聞。
クロウリーが「ありえない! ありえない!」と連発していたが、現に起きてしまったのだから喚いてないで事後処理と対策に励め、とレオナは思ったものだ。
半ば事故でカレッジに招かれたヒカルは、どこからどう見ても女だった。
けれど、その白い肌や華奢な身体はレオナが知る“女”のイメージとは異なっていて、ひどく弱々しい生き物だと印象を受ける。
レオナの故郷では、女は腕っぷしが強く、性格もそれに準ずる。
女はすべて豪胆なものというイメージが強かったから、弱々しいヒカルを見て興味が引かれた。
なにせ、故郷では兵士のほとんどが女というくらい、女は強い生き物なのだ。
ヒカルと正式に会ったのは、それから間もなくのこと。
寮長の定例会議で、クロウリーに連れられてやってきた。
なんでも、学園の用務員に就任したらしい。
就任といっても、用務員なんてただの雑用係。
同じく魔力なしのひょろひょろ男はモンスターと二人で一人の生徒扱いになったと聞くから、対応の不遇が否めない。
けれどもヒカルには悲観した様子はなく、与えられた責務に緊張しているのか、弱々しい声で「よろしくお願いします……」と告げた。
やはり、見た目に違わずか弱い女らしい。
それからヒカルは各寮にも出入りして、用務員としての仕事をこなし始める。
真面目な女らしく、仕事は丁寧で、用務員ひとりいるだけでこうも違うものかと驚いた。
時折、顔を合わせることもあったが、彼女はひどく緊張し、ろくな挨拶もできない。
この男だらけのカレッジでは仕方がないとは思ったけれど、子ウサギのような草食動物丸出しな反応をされると、ついつい喉もとに噛みつきたくなる。
これも、肉食動物の性だろうか。